音喜多議員による国会質問と後藤厚労大臣等の答弁

2022年4月25日 参議院決算委員会

(音喜多議員)
それでは次に産科医療補償制度について伺います。これは出産時の酸素欠乏などのトラブルで脳に重い障害を負った赤ちゃんの家族に総額3,000万円が支払われる制度です。この制度が1月に改正され、補償の対象が広がることになりました。2022年以降の出生児に対しては個別審査が撤廃される事になったという事でありますけれども、この理由をまずは厚労省の参考人にお伺い致します。

―厚生労働省 医政局長 伊原和人くん

(伊原局長)
産科医療補償制度の補償対象基準につきましては、その時点時点での医学的知見や医療水準を踏まえて、医療保険者や学識者が参画する審議会にて決めております。先程、先生からご指摘がございましたように、今年の1月以降、新たな基準が見直されまして、適応されております。見直し前は、在胎週数が28週以降32週未満で出生した子供につきましては、分娩に関連した脳性麻痺かどうか定かではなかった事から、個別に審査し低酸素状況があると認められた場合にのみ補償対象としてまいりました。見直しにあたりましては我が国の周産期医療の進歩によりまして、早産時の脳性麻痺発症率が減少しており、特に在胎週数28週以上の子供で改善が著しくなったことを踏まえまして、在胎週数28週以上で出生した子供については、分娩に係る脳性麻痺と考えられるようになったと判断致しまして、在胎週数28週以上の子供については、原則補償対象とし、個別審査を廃止致しました。

―音喜多駿くん

(音喜多議員)
医学的な見地、発達によってこれは変わったという事でありますけれども、しかしながら過去の個別審査で補償の対象外となった子供のご家庭は、この新基準が遡及適応されないままとなっています。この理由を事前のレクチャーで伺ったところ、その当時の基準においては適切であったからという。いわゆる、行政の無謬性に基づく、私から見たら柔軟性に欠ける、心無い対応。典型的なお役所の回答が返ってまいりまして、いささか私はそれは失望しております。こうした対応は見直すべきであって、遡及適応をさせる必要があると考えるところでありますが。同時にこの遡及適応については、その許容性、実現可能性も判断基準として重要であります。そこで、2021年まで、28週以降の個別審査で補償対象外とした割合、及び補償対象外となった方の人数を厚労省に、参考人に。また、この産科医療補償制度の剰余金は現在どれぐらい残っているのか参考人にお伺いします。

―厚生労働省 伊原局長

(伊原局長)
この制度を運営してます公益財団法人、日本医療機能評価機構の公表書によりますと、今月15日までに判定結果が出ている個別審査の件数では全体で1169件、うち補償対象が622件、補償対象外が544件となっております。補償対象外の割合は46.5%でございます。それから剰余金でございますけれども、2020年5月末時点における剰余金での累計残高は635億円となっております。

―音喜多駿くん

(音喜多議員)
約500人の方が新基準であれば救われたかもしれない。でも対象外。そして剰余金は約600億円ある。ということであればですね、この制度における補償額1人当たり3,000万円ですから、単純計算でこれは剰余金で補うことは十分に可能なわけであって、遡及適応については必要性に加えて許容性も備わっていると考えます。新基準の適用によって、歩行が可能であったり、会話が可能な比較的軽度な脳性麻痺のお子さんが補償を受け取る事が出来る一方で、旧基準が適応された事によって寝返りも出来ない、全介助の重度心身障害をお持ちのお子さんには補償金が行き渡らないという。不公平な事態も現実的に生じていると深刻な陳情が届いてます。そこで、大臣。2021年までに個別審査で補償対象外としたお子さんについても、今回の新基準で当てはめて遡及適応をするべきでありそれに必要な財源も十分にあると考えますが、大臣の見解をお伺い致します。

―後藤厚生労働大臣

(後藤厚生労働大臣)
産科医療補償制度は、原因の如何によらず、分娩に係る医療事故によりまして、脳性麻痺となった子供や、その家族の経済的負担を速やかに補償することを目的とする制度でございます。本制度は、医療保険が実質的に掛金を全て負担する保険制度により実施されております。この制度の補償対象基準については、各々の時点での医学的知見や医療水準を踏まえて、専門家や学会関係者による専門的な議談を経たあと、医療保険者や学識者が参画する審議会において、掛金とともに決定されております。こうした保険制度において医療保険者の協議により定められた保険契約を、事後的に遡及して変更するということの是非を検討する必要があるという風に考えております。こうした、医療保険者が全て掛金を負担している保険制度の仕組みについて、引き続き丁寧にどういう風な事が考えられるのか、説明もしながら考えていきたいと思っています。

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