成育基本法推進議員連盟
2022年11月10日

産科医療補償制度を考える親の会が、成育基本法推進議員連盟にて当事者の想いを訴えました!議員の方々も共感して下さりました!!

発表者 中西美穂

産科医療補償制度とは、2009年からスタートした制度で、脳性麻痺児に対し、障害児家庭の経済的負担軽減のために、20年にわたって3000万の補償金が支払われ、また、産科医療の質の向上の観点から、原因分析が行われる制度です。
掛金は、出産育児一時金から支払われており、わたしたちも健康保険料を通し、支払っています。
今年から、この制度の早産児に対して、設けられていた個別審査に医学的根拠がないことがわかり、撤廃されました。私たちは、過去その個別審査によって補償対象外となった児の集まりです。医学的根拠がないことが判明したのであれば、私たちの子どもも補償してほしいです。剰余金は約635億もあるのです。
昨年12月に佐藤元厚労副大臣に要望書を提出させていただきました。
 私たち障害児家庭は経済的負担が大きくのしかかってきます。一番の問題は子どもの預け先がなく、働けないということです。
 また、補償金のあるなしで、子どもの療育環境に格差が生じていることも大きな問題となっております。

【母親の声①前田】
個別審査対象外の子供を持つ私からは、脳性まひ児の育児による金銭的な負担についてお話させていただきます。
私は夜勤も含めてフルタイムで看護師をしていましたが、この子が生まれてからは働くことができ ずに、今は1日1時間、多くて2時間だけ訪問看護の仕事をしています。 少なく思われるかもしれませんが、学校の車での送り迎えがあるため、働けてもこの時間が限界 です。
また、子どもが病気の時には急に休まないといけないことも多いです。 このようなわがままな条件でも働かせてもらっているだけまだ恵まれている方です。他のご家庭で は全く就業できないことも多いと聞きます。 収入は月3-4万円にしかならず、フルタイムで就労していた時は年収が400-500万円あったのと比 べると収入は大きく減っています。
支出面では、やはり住宅と車の負担が大きいです。我が家の場合は特に住宅の負担が大きいで す。 我が家はもともと社宅に住んでいたのですが、この子が大きくなってきて賃貸では色々なことが対応できなくなりました。 動けない背の伸びた子供を狭い家で移動させること、お風呂に入れる事などがどんどん出来なくなりました。貸家は勝手にバリアフリー化できないので、社宅 から5分のところに家を建てる決断をしました。

スロープをつけたり、家の中も車椅子で移動できるようにと、とにかく土地も家も「広さ」が必要になります。 当時の我が家にとっては分不相応な広い家になりました。その為、今も住宅ローンでの多額の負担があります。
障害児のご家庭は、賃貸の場合でも設備の整った広めのお部屋を借りたり、福祉車両を買った上で更に駐車場を借りる必要があったりと、特別な必要費用がかかってきます。 それには数百-数千万単位のお金が必要になり、その負担はずっとのしかかります。
あと、日常生活では当然、車椅子や座位保持椅子、補装具が必要になります。 これらにはそれぞれ一部助成があるのですが、我が家は所得制限があり全額自費負担で購入するしかありません。子供はすぐに大きくなります。何十万もする車椅子や装具を成長に合わせてすぐに買い替える事は、ボディーブローのように家計に影響します。
このような細かい日々の支出や、バリアフリーのお家の建設に、同じ個別審査で対象となったご家庭は補償金を充てられています。
どちらの子供も同じように等しく人生は続いているのに、あまりに出来ること、出来ない事に差が有りすぎずっと不公平感に苦しんできました。
医学的に正しくなかった基準で補償対象外とされていなければ、もっと娘が小さいうちから取り組めたことが沢山あると思うと悔しい気持ちは正直あります。でも、制度を運営していく過程で、わかった結果ならば、今からでも子供達にきちんと補償をお願いします。
また、看護師として脳性麻痺児の親として、原因分析も「安心してお産に臨める」ことに大きく貢献している事だと思っており、同じような目に遭う産科医の先生、子供を1人でも減らすようにして欲しいと思っています。

最後になりましたが、今日はここに来ることが出来ない全国の個別審査対象外となった子供達と、そのご家庭の代表としてきました。
どうかよろしくお願いいたします。

【母親の声②玉田】
先程前田さんが経済的負担を語られていましたが、我が家には高2と高3の年子。そしてこの子が居ます。姉たちは年が離れた弟を可愛がってくれます、体が不自由な弟の介助をしてくれます。親として「手伝わないでいいから!」と言っても、現在主人が体を壊して闘病中ということもあり、より私を支えようとしてくれます。
この子は知能ははっきりしていてお喋りも上手ですが、肢体不自由は重度で手帳は一級です。脳性麻痺児の子供に多い合併症の「てんかん」や「弱視」もあります。
座ることは不安定で、立つことは出来ません。
26kgも体重がありますので、やはり安全面からも入浴介助の福祉サービスを頼みたいと思うようになりました。お風呂に入るという行為に月に4600円かかることが分りました。それでも自分のコンビニの夜勤の仕事を増やして、福祉サービスの入浴介助を頼もうと思いました。でもそれを知った娘達が「4600円。勿体ないから頼まないで。私達がお風呂に入れるから」と言ってきたのです。この子が産まれてからまともに働きにも出られない現状があります。
我が家の場合は末っ子が脳性麻痺で生まれ、共働きが難しくなり、人生計画が大きく変わってしまったのです。
それでも暮らしていけないので、3人の子供守る為、隙間時間の土日や深夜、融通をきかせてもらい身を削って働いてきました。でも短時間しか働けず低収入です。大学進学という一番お金がかかる時期に差し掛かっても貯金もありません。
脳性麻痺を負ったその子供が産科医療補償制度の補償対象になり、その子に充てられるお金がキチンと有ることで きょうだいの人生の心配が軽減したという保護者も多いです。
バリアフリーの家を建て、思う存分リハビリや医療位に挑戦出来る子供がいる一方で、同じ個別審査で落とされた家庭には我が家のように4600円のお風呂すら頼めず、きょうだいが協力して介助をしている家庭があることも知って頂きたいです。
申請をしたきっかけは出生時の低酸素で運動機能が壊死し、麻痺が残ると医師から説明されたので、それならば産科医療補償制度の対象だと思ったからです。
しかし個別審査では「出生時の低酸素状態が認められない」と審査結果が出され、補償対象外。同じリハビリに通う同じ疾患で同じ状態の子が「玉田さんが審査に出すなら、うちもダメもとで出してみる」と言いだし、その子は個別審査で対象。こんな事例ばかりを保護者は長年味わっています。
夫婦2人で個別審査の不公平を伝えて行きたいと思い
「機構」「厚労省」「内閣府」「見直し検討委員会」「運営委員」など審査に関わる機関に何度もコンタクトをとり回答を求めてきました。機構のホームページで対象となった子供達の原因分析も定期的にチェックし、疑念が残るデータには機構の担当者に何度も電話をしてきましたが、長年抑え込まれてきました。
でも今は主人と2人ではありません。
親の会に入ってから驚きました。全く同じ気持ちの保護者が全国に沢山居たからです。
最後に前田さんと同じく 私も「最初から補償がされていたらもっと早くから取り組めたことが沢山あったのに」と思います。脳性麻痺児の親は医療やリハビリなど全ての事に「子供の小さいうちから早く取り組んだ方が効果的」と医師に言われています。麻痺の等級や息子の生活の質が変わった可能性があると考えると「補償を得られていない空白の期間」が取り戻せないものかと悔しく思います。でも後から分ったことで仕方がないのであれば、せめて今からでも子供達にきちんと補償をお願いします。どうかよろしくお願いいたします。



【母親の声③】

これから個別審査をうけることになる2歳の息子の親です。
我が家を含めこれから個別審査を受けることになる家庭は、今の審査基準で対象外にされてもその結果を受け入れられない。と申請する前からかなりのストレスを抱えています。医学的に合理性のある審査が出来ていないとわかりつつも、私も息子の申請準備をし、審査を受け、結果を待つことになります。その当事者の気持ちを考えて頂きたいと思い今日はこの場にきました。
また、このままでは この親の会の先輩方のような不公平な審査結果を受ける保護者が一定数増えます。育児だけでも大変な毎日です。
どうか早期解決をお願いいたします。






副代表 八幡です。

私からは、個別審査の経緯と、親の会の願いをお話します。

そもそもこの制度は、産科医師を裁判から守るために作られた制度でありまして、
機構の議事録を見る限り、制度で補償をしたいのは「分娩事故の可能性があって、医師が裁判される可能性のある場合だけ」なんです。

なので、早産、未熟児で脳性麻痺になったこどもは補償の対象にしたくなかったけども、
分娩事故の可能性がある人は補償したいので、アメリカの分娩事故の基準を準用した個別審査基準で「ふるい」にかけていました。

その「ふるい」で我が子も落とされたわけですが、この線引きは、実は制度開始以前から「合理的ではない」と問題視されておりました。

しかし、脳性麻痺の統計が不十分で、財源に不安があり、安定的な制度運営が必要とされ個別審査による線引きが課せられました。

2013年には日本医師会を始め、産婦人科医会、学会などから厚労大臣に個別審査撤廃の要望が上がり、機構の検討でも撤廃に向けた動きがありましたが、
しかし、社保審の医療保険部会で「エビデンスに欠ける」と言われ、個別審査は続けられました。

そうやって積み上げられた私たち個別審査で落とされた子供と親のデータが2020年に解析され、

脳性麻痺の発症要因が個別審査に当てはまるような低酸素だけではないことや、
医療水準の向上などで「もはや在胎週数28週以上の出産児は未熟性ではない」こと、
そして
個別審査で落とされた99%が
実は分娩事故だった、
ということが判明し、

さらには
余剰金を掛金に充当して、同時に出産一時金からの掛け金拠出額を減額することで
医療保険者も納得され、個別審査は撤廃されました。


しかし、
今日お聞き頂きました、脳性麻痺児を持つ家庭の経済的負担は、
このように不合理な基準で落とされたまま解消されずにいます。

自分の出産が事故だったかもしれないのに、原因も調査されず、事故の経緯を 未来の医療に貢献できておりません。

救済の議論もされず、置き去りにされたことも国会答弁で明らかになりました。

制度の剰余金は、現在も635億円ほどありますが、
早々に掛金への充当が決まったから、他のことには使えない、と繰り返し説明されています。

合理性のない基準で 私たちを落として貯めたお金なのに、です。

これから出産する妊婦の負担金額は減額され、未来に向かっては良くなっていますが、

個別審査撤廃の理由からは、
分娩事故であるにも関わらず「医学的に合理性のない基準」で落として補償漏れを出し、
さらに

『そもそも個別審査は必要なかったのではないか??』とまで読み取れました。

我が子たちは、低酸素を示すデータが取れなかったので、補償をされず、分断され、出産事故で苦しい生活を強いられています。今、補償もされず、果たして医師も裁判から守ることはできるでしょうか?

本当は私も元気に産んであげたかったんです!
でも、結果として、麻痺は一生治りません。
生命を維持するためのリハビリや医療・福祉器具は、一生やり続けなければならないのです。

むしろ、補償されていないことで出来なかった手術やリハビリもありました。

補償金があれば、我が子も立つことができたかもしれない、それくらい違うのです。

一時金だけではなく、切れ目のない補償が必要なのです。

私たちの子供にも未来があります。生きているのです!


私が子たちも2022年生まれの子供と同等に扱い、どうか、
一分一秒でも早く、
未来の医療のためにも
私たちが受けた医療をきちんと補償し、原因分析をお願いしたいです。

私たちは、絶対に諦めません!

親の会からは以上になります。



powered by crayon(クレヨン)